親が亡くなる前にしておきたい相続の準備。親が元気なうちに考えておくこととは
親との別れは、いつやってくるか分かりません。いざというときに慌てず、家族が悲しみに暮れる間も正しく手続きを進めるためには、親が元気なうちから準備を始めることが大切です。
相続が発生すると、遺産分割の話し合いや各種名義変更など、膨大な手続きが一気に押し寄せてきます。生前に準備しておくことで、家族全員の負担を大幅に軽減できるでしょう。この記事では、初めて相続を考える方に向けて、親が亡くなる前にやっておきたい準備を解説します。
親が亡くなる前に準備しておくべき理由

親の死は、誰にとっても避けて通れないできごとです。しかし、実際にそのときを迎えると、悲しみに向き合う余裕もないほど多くの手続きや判断を迫られることになります。
相続手続きは想像以上に大変
親が亡くなると、悲しみに暮れる間もなく、葬儀の手配に始まり、年金・健康保険・銀行口座・不動産の名義変更、相続税の申告と、膨大な作業が一気に押し寄せてきます。多くの人が相続を経験するのは生涯で1〜2度であり、ほとんどが初めての経験のまま手探りで進めることになるでしょう。
「どこに何の財産があるか」が分からないまま手続きを始めると、金融機関への問い合わせだけで数ヶ月かかることもあります。生前に少しずつ準備しておくだけで、残された家族の精神的・肉体的な負担を大きく軽減できます。
お金・財産まわりの準備

相続手続きの中でも、特に時間と手間がかかるのが「お金や財産」に関する整理です。預貯金や不動産、保険などの情報が分からないままだと、遺族は一つひとつ調べながら手続きを進めなければなりません。親が元気なうちに財産の情報を整理しておくことで、相続手続きがスムーズになります。
財産目録を作っておく
財産目録とは、故人が保有するすべての財産(土地・預貯金・株式・貴金属など)と、借入金などの負債を一覧にまとめたものです。親と別居している場合、どこにどれだけの財産があるかを把握することは難しく、生前に整理されていないと、遺族が手当たり次第に金融機関へ問い合わせる事態になりかねません。
プラスの財産だけでなく、ローンや未払い金などマイナスの財産も明記しておくことが重要です。財産全体を把握することで、相続放棄を選ぶかどうかの判断にも役立てられます。
財産目録に記載しておくべき主な項目は以下のとおりです。
・預貯金口座(金融機関名・口座番号)
・不動産(土地・建物の所在地・評価額の目安)
・有価証券・投資信託(証券会社名・口座番号)
・生命保険(保険会社名・証券番号・受取人)
・借入金・ローン(残高・返済先)
・デジタル資産(ネット証券・暗号資産など)
銀行口座・証券口座を整理する
名義人が亡くなると、金融機関が死亡を認知した時点で口座は凍結されます。口座の数が多いほど手続きの手間が増えるため、生前にできるだけ口座を集約しておくことが望ましいでしょう。
口座の解約・名義変更手続きには、戸籍謄本・印鑑証明書・遺産分割協議書などの書類が必要です。書類に不足や記入漏れがある場合は受け付けてもらえないケースもあるため注意しましょう。
生命保険の受取人を確認する
生命保険の死亡保険金は、原則として受取人に指定された人の固有財産となるため、遺産分割の対象にはなりません[注1]。言い換えると、遺言書がなくても受取人が指定されていれば保険金はスムーズに支払われる一方、受取人の設定が古いままだとトラブルの原因になることも。
離婚後に受取人変更をしていない、家族構成が変わっているなどのケースでは、意図しない人に保険金が支払われることがあります。受取人の変更は契約者本人しか手続きできないため、親が元気なうちに確認・変更を済ませておく必要があります。
[注1]国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
遺言書とエンディングノートの準備
相続トラブルを防ぐうえで重要なのが、親の意思を事前に形として残しておくことです。財産の分け方だけでなく、葬儀や医療、家族へのメッセージなども含めて記録しておくことで、残された家族は迷うことなく判断できます。
遺言書は「家族が多い」「財産が少ない」家庭でも有効
遺言書には法的効力があり、民法で定められた法定相続分よりも優先されます。「うちは家族仲が良いから大丈夫」「財産が少ないから不要」と思いがちですが、親が亡くなった後に相続をめぐって家族関係に亀裂が入るケースは少なくありません。
遺言書の主な種類は3つです。「自筆証書遺言」は、本人が全文・日付・署名・押印して作成するもので、費用をかけずに作れる反面、様式の不備があると無効になります。自筆証書遺言については2019年から開始された法務局の「自筆証書遺言保管制度」の利用を考えてもよいでしょう。
「公正証書遺言」は、公証人が作成し、公証役場で保管されるため、形式上の不備が生じにくく、確実性が高い書類です。
「秘密証書遺言」とは、内容を秘密にしたまま遺言書の存在だけを公証役場で証明してもらう方式です。どれも法的効力を持ちますが、様式要件を正しく満たす必要があります。
エンディングノートで親の意思を記録しておく
エンディングノートには法的効力がありません。しかし、財産情報・医療・介護の希望・葬儀の方針・デジタルアカウント情報など、相続手続きに役立つ幅広い情報を自由に書き残せます。
遺言書と異なり書式に決まりがなく、何度でも書き直すことが可能で、市販のものを利用することも、普通のノートを活用することも可能です。
遺言書の補完として機能し、なぜそのような財産の分け方にしたかを記しておくことで、残された家族の納得感につながります。まず何かひとつ行動するとしたら、エンディングノートの準備は最も着手しやすい第一歩といえるでしょう。
まとめ
相続の準備は、「いつかやろう」と先延ばしにするほど、いざというときの家族の負担が増えてしまいます。財産目録の整備、口座の集約、遺言書の作成など、一つひとつは小さなアクションでも、その積み重ねが家族を守ることにつながるのです。
まずは親と一度「相続についての話し合い」の時間を設けてみましょう。不明な点や詳しい試算については、北海道銀行の相続・贈与の相談窓口をぜひご活用ください。
※本記事は2026年3月16日時点の情報を基に執筆しております。
