車のローン月々いくらが適正? 維持費込みの本当の月額負担とは
「この車、月々いくらで乗れるんだろう?」
憧れの車を前にしたとき、真っ先に気になるのはやはり月々の支払額ではないでしょうか。
しかし、広告でよく見かける「月々〇円〜」という魅力的なフレーズに惹かれてローンを組んでしまうと、後から「こんなはずじゃなかった」と後悔するケースも少なくありません。
なぜなら、車にかかる費用はローンの返済だけではないからです。見落とされがちな「維持費」が家計を圧迫したり、月々の支払いが安く見えても「総支払額」が大きく膨らんでいたりすることがあるのです。
この記事では、そうした失敗を防ぐために、以下のポイントを徹底的に解説していきます。
・価格帯別のリアルな返済シミュレーション
・ローン返済額+維持費=本当の月額負担
・年収から導き出す、無理のない最適な返済額
・月々の支払いを抑える工夫に潜むリスク
これを読めば、あなたにとって本当にふさわしい「月々の支払額」が明確になり、安心して理想のカーライフを始めることができるはずです。
【価格帯別】車のローン、月々いくら?返済期間・頭金別シミュレーション
まずは、車両価格ごとに月々のローン返済額がいくらになるのか、具体的なイメージを掴んでいきましょう。ここでは、例としてローン金利を年利3.0%と想定した場合、「頭金なし」と「頭金20%」の2パターンで、返済期間別にシミュレーションします。
※各返済額は、実質年率3.0%で試算した概算です(元利均等返済方式)。端数は四捨五入して表示しています。実際の金利や支払額は、金融機関・販売店により異なります。
200万円の車の場合
人気のコンパクトカーや軽自動車がこの価格帯の中心となります。初めてのマイカーとしても人気の選択肢です。
【200万円の車の月々返済額(金利3.0%)】
| 返済期間 | 頭金なし | 頭金20%(借入160万円) |
| 3年(36回) | 約58,200円 | 約46,500円 |
| 5年(60回) | 約35,900円 | 約28,700円 |
| 7年(84回) | 約26,400円 | 約21,100円 |
300万円の車の場合
ファミリー層に人気のミニバンやコンパクトSUVが視野に入ってきます。
【300万円の車の月々返済額(金利3.0%)】
| 返済期間 | 頭金なし | 頭金20%(借入240万円) |
| 3年(36回) | 約87,200円 | 約69,800円 |
| 5年(60回) | 約53,900円 | 約43,100円 |
| 7年(84回) | 約39,600円 | 約31,700円 |
400万円の車の場合
売れ筋のSUVや輸入車のエントリーモデルも選択肢となります。
【400万円の車の月々返済額(金利3.0%)】
| 返済期間 | 頭金なし | 頭金20%(借入320万円) |
| 3年(36回) | 約116,300円 | 約93,100円 |
| 5年(60回) | 約71,900円 | 約57,500円 |
| 7年(84回) | 約52,900円 | 約42,300円 |
500万円以上の車の場合
国産のフラッグシップモデルなど、憧れの1台が現実的になってくる価格帯です。
【500万円の車の月々返済額(金利3.0%)】
| 返済期間 | 頭金なし | 頭金20%(借入400万円) |
| 3年(36回) | 約145,400円 | 約116,300円 |
| 5年(60回) | 約89,800円 | 約71,900円 |
| 7年(84回) | 約65,100円 | 約52,900円 |
このように、返済期間や頭金の有無で月々の支払額は大きく変わります。しかし、本当に重要なのはここからです。このローン返済額に「維持費」を加えた金額こそが、あなたが毎月車に支払うリアルなコストなのです。
「ローン返済額」だけじゃない、維持費込みの「本当の月額負担」
車を所有すると、ローン以外にも様々な費用がかかります。これらを「維持費」と呼び、大きく分けると以下のようなものがあります。
| ・税金:自動車税(種別割)、自動車重量税 ・保険料:自賠責保険(強制保険)、任意保険 ・メンテナンス費用:車検代、オイル交換、タイヤ交換など ・燃料費:ガソリン代や軽油代 ・その他:駐車場代(必要な場合)、高速道路料金など |
これらの維持費を無視してローンを組むと、家計が一気に苦しくなる可能性もあります。では、実際にどれくらいの維持費がかかるのでしょうか。
【車種別】リアルな年間維持費を徹底シミュレーション
ここでは、軽自動車、コンパクトカー、SUVという人気の3カテゴリを例に、年間の維持費をシミュレーションしてみましょう。
※年間走行距離10,000km、ガソリン代170円/L
※任意保険は20等級・30歳以上・車両保険ありで試算。実際の保険料は、車種の料率クラス、運転者の年齢、居住地、補償内容などで大きく変動します。
※軽自動車税(種別割)は、初度登録年月によって異なります。平成27年3月以前に登録された車両は年額7,200円、それ以降に登録された車両は年額10,800円が標準となります。
※自動車重量税は、車検(2年)ごとにかかる費用を2で割って1年あたりの金額を算出しています(新車登録から13年未満・エコカー減税非対象の場合)。
※自賠責保険は、車検時に24ヶ月分を支払うのが一般的なため、24ヶ月の保険料を2で割って1年あたりの金額を算出しました。
※点検料や部品の交換、駐車場代は含みません。
| 項目 | 軽自動車 | コンパクトカー (1,000cc超~1,500cc以下) |
SUV (1,500cc超~2,000cc以下) |
| 自動車税 | 10,800円 | 30,500円 | 36,000円 |
| 自動車重量税 | 3,300円/年 | 12,300円/年 | 16,400円/年 |
| 自賠責保険 | 8,770円/年 | 8,825円/年 | 8,825円/年 |
| 任意保険 | 約50,000円 | 約54,000円 | 約73,000円 |
|
燃料費(燃費) |
約77,000円(22km/L) | 約59,000円(29km/L) | 約113,000円(15km/L) |
| 年間維持費合計 | 約149,870円 | 約180,625円 | 約259,225円 |
| 月額換算 | 約12,490円 | 約15,050円 | 約21,600円 |
ご覧の通り、軽自動車でも月々約1.2万円、SUVになると月々約2万円の維持費がかかることが分かります。点検や部品交換が必要な場合や駐車場を借りる場合は、さらに上乗せされます。
ローン返済額+維持費=あなたの月々のリアルな負担額
それでは、先ほどのローン返済額に、維持費を足してみましょう。ここでは、300万円のSUVを頭金なし・5年ローンで購入した場合を例にします。
| 項目 | 金額 |
| ローン月々返済額 | 約53,900円 |
| 月々の維持費(駐車場代なし) | 約21,600円 |
| リアルな月額負担合計 | 約75,500円 |
「月々5万円台なら払えるかな?」と考えていたとしても、実際の負担額は約7.5万円にのぼります。この差は想像以上に大きいものです。
「車のローン、月々いくら?」と考えるときは、必ず維持費を含めたリアルな月額負担で判断するようにしましょう。
「月々の支払いを抑える工夫」に潜むリスク
車を購入する際、販売店の担当者から「月々の支払いをもっと安くする方法がありますよ」と提案されることがあります。たしかに負担を軽く見せる仕組みは魅力的に映りますが、その裏には注意すべきポイントが隠れている場合もあります。
ケース1:返済期間を延ばす → 利息が増え、総支払額が大きくなる
最も簡単に月々の返済額を下げる方法が、「返済期間を長くする」ことです。実際、5年ローンを7年に延ばすだけで、月々の支払いは1万円以上安くなることもあります。しかし、その分、支払う利息の総額は大幅に増加します。期間が長くなるほど、金利負担がかさんでいくのです。
【300万円を金利3.0%で借りた場合の比較】
| 返済期間 | 月々の返済額 | 支払う利息の総額 | 総支払額 |
| 5年(60回) | 約53,900円 | 約234,400円 | 約3,234,400円 |
| 7年(84回) | 約39,600円 | 約329,800円 | 約3,329,800円 |
上記のように月々の負担は軽くなりますが、その分、利息は約10万円も増える計算になります。さらに、7年後には車の価値が大きく下がり、「ローンだけが残って車の価値はほとんどない」といった状況に陥る可能性もあります。
ケース2:「残価設定ローン」の安さの裏にある制約
「残価設定ローン(いわゆる残クレ)」も、月々の返済額を抑える手法としてよく利用されます。これは、契約時に将来の下取り価格(残価)を設定し、車両価格からその残価を差し引いた金額を分割で支払う仕組みです。
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【残価設定ローンの仕組み】 (300万円 - 120万円) = 180万円 ← この180万円と金利を5年間で分割払いする |
支払う金額が減るため、毎月の負担はぐっと軽くなりますが、以下のような注意点があります。
・契約満了時に選択を迫られる
「返却」「買い取り」「乗り換え」「再ローン」のいずれかを選ばなければならず、再び費用が発生する可能性もあります。
・金利が高めに設定されることが多い
表面上の月額は安くても、実質的には損をしているケースもあります。
・走行距離やカスタマイズに制限がある
走行距離の上限を超えたり、車体に傷や改造があると追加費用(追い金)を請求されたりする可能性があります。
「とにかく月々の支払いを安くしたい」という方にとっては便利な選択肢かもしれませんが、長期的に見れば自由度の低さや追加負担がネックになることもあります。
年収いくらなら安心? ローン審査と月々の支払額の関係
「自分はいくらくらいの車なら無理なく買えるんだろう?」これは誰もが抱く疑問です。その答えを導き出す重要な指標が「返済負担率」です。
「返済負担率」は年収の25~35%
返済負担率とは、あなたの年収に占める、すべてのローンの年間合計返済額の割合のことです。計算式は次の通りです。
| 年間ローン返済額 ÷ 年収 × 100 = 返済負担率(%) |
金融機関がローン審査で最も重視するポイントの一つで、一般的に25〜35%が上限の目安とされています。ただし、これは住宅ローンや他のカードローンなども含めた合計の割合です。安心してカーライフを送るためには、車のローン単体での返済負担率は年収の20%以内に抑えるのが理想的といえるでしょう。
【年収別】購入できる車の価格帯と月々の支払額の目安
それでは、返済負担率を25%に設定した場合、年収ごとにどれくらいの車が買えるのか、目安を見てみましょう。
※年収の25%を年間返済上限額とし、5年(60回)・実質年率3.0%でローンを組んだ場合の借入可能額の目安です。車両本体価格と諸費用をすべてローンでまかなう前提の概算であり、実際の購入時には登録費・税金などが別途かかります。月々の返済額は、年間返済上限額を12分割し、小数点以下を四捨五入しています。
※返済負担率は金融機関や年収によって異なります。
| 年収 | 年間返済上限額 (返済負担率25%) |
月々の返済額の目安 | 借入可能額の目安 |
| 300万円 | 75万円 | 約62,500円 | ~340万円 |
| 400万円 | 100万円 | 約83,300円 | ~460万円 |
| 500万円 | 125万円 | 約104,200円 | ~570万円 |
| 600万円 | 150万円 | 約125,000円 | ~690万円 |
| 700万円 | 175万円 | 約145,800円 | ~810万円 |
| 800万円 | 200万円 | 約166,700円 | ~920万円 |
※月々の返済額は100円未満を四捨五入、借入可能額の目安は返済負担率25%以内となるよう10万円未満を切り捨てした概算値です。
この表はあくまで「借入可能額の上限目安」にすぎません。先述の通り、これに加えて「維持費」がかかることを忘れないようにしましょう。実際には、表よりも少し下の価格帯の車を選ぶか、頭金をしっかり準備するのが賢明です。
審査に通りやすくなる3つのコツ
「どうしてもこの車が欲しいけど、審査が不安......」という方は、以下の3つのポイントを意識してみてください。
1. 頭金をできるだけ多く準備する
借入額が減るため、返済負担率が下がり、金融機関からの信用度が上がります。「計画的にお金を貯められる人」という印象を与える効果もあります。
2. 他のローンを整理しておく
使っていないクレジットカードやカードローンがあれば解約しておきましょう。借入枠があるだけで、返済負担率の計算上、不利になることがあります。
3. 勤続年数を重ねる
勤続年数が長いほど、収入の安定性を評価してもらいやすい傾向があります。転職やキャリアチェンジを考えている場合は、その時期とローン申込みのタイミングが審査に影響する可能性があるため、計画的に検討するとよいでしょう。
【ライフイベント別シミュレーション】ローン返済はどうなる?
自動車ローンは3年、5年、7年と長期にわたる契約です。その間に、結婚や出産、転職など、ライフイベントによって生活が大きく変わることもあるでしょう。将来を見据えてローン計画を立てることが、後悔のないカーライフへの第一歩となります。
結婚して世帯年収が上がった/下がった場合
結婚によってパートナーと収入を合算できれば、世帯年収が増え、家計にゆとりが生まれる可能性があります。そうした場合は、繰り上げ返済(まとまったお金を前倒しで返済すること)を活用して、ローンの完済を早めたり、利息の負担を軽減したりすることも可能です。
一方で、パートナーが仕事を辞めるなどして世帯年収が下がるケースも考えられます。そのような将来を見据えて、契約時には返済額に余裕を持たせるなど、無理のないローン設計をしておくことが重要です。 変化が起きた後は、家計全体の見直しや支出の最適化が求められます。
子どもが生まれて支出が増えた場合
子どもの誕生は大きな喜びですが、同時におむつ代やミルク代、将来の教育費など、家計の支出は確実に増えていきます。こうした将来のライフイベントも想定したうえで、契約時に無理のない返済額を設定しておくことが大切です。
出産後に支出が急増すると、独身時代や夫婦ふたりの生活を前提にしたローン返済では対応しきれない可能性があります。家族計画を考慮し、余裕を持った資金設計をしておくことで、安心して子育てとカーライフを両立できるでしょう。
転職して収入が変動した場合
転職によって収入が増える場合は問題ありませんが、キャリアチェンジや勤務形態の変更により、一時的に収入が下がるケースもあります。そのような変化に備えるには、契約時にボーナス払いを避ける、返済額を生活に支障のない範囲に抑えるなど、慎重なローン設計が重要です。
万が一返済が困難になりそうな場合は、放置せず早めに金融機関へ相談することで、返済方法の見直しやリスケジュールの提案を受けられる可能性があります。
今すぐできる!月々の支払いを賢く抑える4つの方法
最後に、月々の支払いや総支払額を賢く抑えるための具体的な方法を4つ紹介します。少しの工夫で、数十万円単位の差が生まれることもあります。
方法1:金利の低い銀行ローンを選ぶ
車のローンには、大きく分けてディーラーローン(販売店経由)と銀行ローン(自分で申し込む)があります。一般的に、ディーラーローンの金利は4〜8%程度であるのに対し、銀行ローンは1〜4%程度と、金利が低く設定されているのが特徴です。
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【300万円を5年で借りた場合の金利差】 金利5%:総支払額 約3,400,000円 |
上記の差額は約17万円にもなります。ディーラーローンは手続きが簡単というメリットがありますが、この金利差は無視できません。少し手間をかけてでも、金利の低い銀行ローンを検討する価値は十分にあります。
方法2:頭金を準備して借入額を減らす
頭金を用意することは、支払総額を抑える最も基本的かつ効果的な方法の一つです。借入額が少なくなれば、支払う利息も減り、月々の返済額も軽くなります。購入したい車が決まったら、すぐにローンを組まず、できるだけ頭金を貯める期間を設けることも有効な選択肢です。
方法3:購入する車のグレードやオプションを見直す
車の価格は、選ぶグレードやオプションの有無で大きく変動します。「上位グレードが欲しい」「便利な装備は全部つけたい」という気持ちはよくわかりますが、本当に必要かどうかを一度立ち止まって見直すことが大切です。グレードを一つ下げたり、オプションを厳選したりするだけでも、数十万円単位の節約につながることもあります。
方法4:下取り車の価格交渉を徹底する
今乗っている車を買い替える場合、その下取り価格は新しい車の購入資金に充てることができます。例えば、下取り価格が10万円上がれば、それだけローンの借入額を10万円減らすことも可能です。
ディーラー1社だけに査定を任せず、複数の買取専門店に「相見積もり」を依頼するのが鉄則です。最も高い価格を提示してくれた業者に売却することで、初期費用の負担を大きく軽減できるかもしれません。
「月々いくらか」より「いくらにすべきか」を考え、最適なカーライフを
車のローンを考えるとき、私たちはつい「この車は月々いくらで乗れるか?」という視点に偏りがちです。しかし本当に大切なのは、「自分の収入やライフプランに合わせて、月々いくらまでに抑えるべきか?」という主体的な視点を持つことです。
1. ローン返済額だけでなく維持費を含めた「本当の月額負担」を把握する
2. 年収に見合った返済負担率を守り、無理のない借入額を設定する
3. 月々の安さだけでなく、総支払額や将来のライフイベントまで見据える
これらのポイントを押さえることで、「ローン返済で家計が苦しくなる」といった失敗を回避し、心から満足できるカーライフを送ることができるはずです。
この記事が、あなたにとって最高の一台と無理なく付き合っていくための道しるべとなれば幸いです。
