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教育費の不安を解消する「借りる備え」|子どもの夢を諦めないための資産防衛術

「子どもの進路はまだ分からないし、具体的な教育費の計画なんて立てられない......」

親の6割以上が教育費の負担を重く感じているという調査結果(参考:ソニー生命「子どもの教育資金に関する調査2025」)もあるように、多くの方が共通して抱える悩みなのではないでしょうか。しかし、高校生になった子どもから「留学したい」「私立の理系に進みたい」と打ち明けられたとき、「お金がないから」という理由で、その夢を諦めさせることだけは避けたいものです。

この記事では、教育ローンを「今すぐ借りる」のではなく、「いつでも借りられる状態にしておく」という、新しい視点を紹介します。これは、万が一に備えて選択肢を手元に残しておく"お守り"のような資産防衛術です。

なぜ、教育費の計画は「計画通り」に進まないのか?

子どもの教育費の計画が難しい最大の理由は、その「予測不能性」にあります。どれだけ緻密に計画を立てたつもりでも、想定外の事態は起こり得るのです。

予測不能な子どもの進路(私立・公立、文系・理系、留学)

子どもの興味や才能は、成長と共に大きく変化します。例えば、漠然と「大学に進学するだろう」と考えていても、その進路が国公立か私立か、文系か理系か、あるいは海外留学を希望するかによって、必要な教育費は数百万円、場合によっては一千万円以上も変動します。

また、大学の学費だけでなく、予備校費用や受験料、一人暮らしを始める場合の敷金・礼金、生活費など、本筋の学費以外にも大きなお金が必要になります。子どもの希望が具体的になるまで、正確な目標金額を設定するのは極めて困難なのです。

想定外の家計の変化(転職、病気、介護など)

計画を狂わせる要因は、子ども側だけではありません。親自身のライフプランにも変化はつきものです。

・会社の業績悪化や転職による収入の変動
・病気やケガによる一時的な休職
・親の介護にともなう費用や時間の負担の増加

こうした家計の変動と、教育費のピークが重なる可能性は誰にでもあります。

そこで役立つのが「教育ローン」という名のお守り

予測不能な事態に備え、子どもの夢を守るために役立つのが「教育ローン」です。しかし、ここでは「借金をする」という発想を一度リセットしてください。

「借りる」のではなく「借りられる権利」を確保するメリット

教育ローンは、「今すぐ借りるもの」ではなく、「いつでも借りられる権利(=お守り)」として準備しておくという考え方が、精神的な安心感につながります。

「うちは貯金があるから大丈夫」と思っていても、その貯金を取り崩すことで、老後資金や住宅ローンの返済など、ほかのライフプランに影響が出る可能性があります。

手元の現金を温存したまま、「いざとなれば頼れる資金がある」という状態を確保しておくことで、急な教育費のために積み立てた投資信託を慌てて売却して機会損失を招いたり、老後資金や住宅ローンの返済原資を取り崩したりする事態を避け、家計全体への負担を最小限に抑えることができます。これが、教育ローンを"お守り"として備える最大の経済的メリットと言えます。

不安を解消する「仮審査」「事前審査」を受けておくべきタイミング

「借りられる権利」を確保するうえで有効なのが、金融機関による「仮審査」や「事前審査」です。これは、本格的な申し込みの前に、借入が可能かどうかを簡易的に審査してもらう手続きです。おすすめのタイミングは、高校2年生の冬〜高校3年生の夏ごろです。

【理由】

・進路の方向性が見え始める時期であること
・推薦入試などの場合、秋には受験料や入学金の支払いが必要になること
・審査には数週間かかる場合があるため、余裕を持てること

この時期に一度、仮審査を受けて「希望する金額で借入可能か」を把握しておくだけで、「最悪この金額までは大丈夫」といった安心感が得られます。実際に借りるかどうかは、その後の状況を見てから判断すれば問題ありません。

「お守り」と両立!"いざ"に備える子育て期の資産形成術

教育ローンというお守りがあっても、基本的には自分自身で備えることが大切です。特に子育て期は、限られた家計の中で計画的に資産を築いていく視点が求められます。

まずは「すぐ使えるお金」を厚めにキープ

資産形成では、増やす前に「備える」ことが欠かせません。特に受験期には、塾代や受験料、交通費など急な支出が重なります。

学資保険で積み立てていても、満期まで引き出せないことが多いため、いざというときに現金が足りず困るケースも見られます。こうした事態を防ぐには、「すぐ使えるお金」をある程度確保しておくことが、最初の一歩となります。

一つの方法に偏らず、全体のバランスを整える

教育資金の準備には、学資保険や積立投資など複数の手段がありますが、それだけに頼らず、家計全体のバランスを見直すことが大切です。

例えば、住宅ローン返済や老後資金づくりと同時に、教育費も計画的に積み立てていく必要があります。将来必要となる資金を「教育」「住まい」「老後」の3つの柱でバランスよく考えることで、偏りのない安定した資産形成が可能になります。

いざというとき、慌てないためのローンの基礎知識

教育ローンを実際に借りるかどうかは別として、その仕組みや準備すべきことは事前に把握しておきましょう。

国、銀行、信販会社......どこで「借りる権利」を確保しておくべきか?

教育ローンは、主に「国」「銀行」「信販会社」が扱っています。それぞれに特徴があるため、まずは第一候補として国の教育ローンを検討し、次に取引のある銀行に相談してみるのがおすすめです。

国の教育ローン 銀行ローン 信販会社ローン
主な特徴 日本政策金融公庫が提供。世帯年収に上限あり。店頭・郵送・Webで申し込み可能。 メガバンク・地方銀行などが提供。条件は銀行によって異なる。店頭・Webで申し込み可能。 クレジットカード会社などが提供。金利は銀行や公庫に比べてやや高めになる傾向。Web完結型の手続きが多い。
メリット 低金利かつ固定金利。審査が比較的緩やか。 金利が比較的低く、借入限度額も高い。 審査がスピーディー。申し込みが手軽。
デメリット 借入限度額がやや低め(子ども1人につき350万円まで)。 口座開設が必要。 金利が比較的高めに設定されている。

金利の種類と返済方法。最低限知っておきたいポイント

・金利の種類
教育ローンには主に次の2種類があります。

固定金利:返済期間中ずっと金利が変わらない。返済額が一定なので計画を立てやすい。

変動金利:一定期間ごとに金利が見直される。市場金利の影響を受けるため、返済額が増減する可能性がある一方、初期金利が低く設定されることが多く、借入当初の返済負担を軽くできる。

※どちらがよいかは一概には言えず、返済計画や家計状況に応じて選ぶことが重要です。

・返済方法
多くの教育ローンでは、「在学中は利息のみ支払い、卒業後に元金を返済」という方式を選べます。在学中の家計負担を抑えられるのがメリットです。

「借りられる安心」が、子どもの未来を支える

教育費は、計画通りにいかないことも多いものです。急な出費や想定以上の支払いに備えるには、貯蓄だけでなく「借りる選択肢」を持っておくことも重要です。たとえ借りない場合でも、制度を理解し、仮審査などで準備しておけば、いざというときに慌てず対応できます。

教育ローンは「最後の手段」ではなく、「備えのひとつ」として考えることが大切です。その存在が、親に安心感を与え、子どもの未来を支える力にもなります。