リセールバリューで考える「資産になる家」選び
「一生に一度の買い物だから、絶対に失敗したくない」、マイホーム購入を前に、誰もがそう思うはずです。しかし実際には、「住み心地」といった目先の感情を優先し、購入から数年で転勤が決まったり、子どもの成長に伴い部屋数が不足したりするなど、将来のライフプランの変化といった不確実性を見落としてしまうケースも少なくありません。
この記事では、家を単なる「消費財」としてではなく、資産形成の視点から「不動産」として捉えることの重要性に着目します。そして、将来も価値が下がりにくい家の選び方と戦略的な住宅ローンの活用法についても解説します。
「消費する家」と「資産になる家」の決定的な違い
マイホームには、時間の経過とともに価値が大きく下がる「消費する家」と、価値を維持、あるいは向上させる「資産になる家」の2種類があります。この違いを理解することが、後悔しない家選びの第一歩です。
なぜ「資産価値」で家を選ぶべきなのか?
終身雇用が当たり前ではなくなり、働き方や生き方が多様化した現代において、「同じ場所に一生住み続ける」という前提は崩れつつあります。
| ・突然の転勤やキャリアアップのための転職 ・家族構成の変化(子どもの独立、親との同居など) ・より自分らしい暮らしを求めての移住 |
こうしたライフプランの変化に対応するためには、いざというときに「売却」や「賃貸」という選択肢を持てる家、つまり資産価値の高い家を選ぶことが不可欠なのです。
「リセールバリュー」というリスクヘッジ
資産価値を見極めるうえで、注目したいのが「リセールバリュー」です。リセールバリューとは、住まいを将来売却する際に、どの程度の価値が残っているかを示す指標です。購入価格に対して、何年後に何%で売れるかが、判断のひとつの目安となります。昨今では、首都圏のマンションを中心にリセールバリューが100%を超え、購入時よりも高く売却できることも珍しくありません。
北海道では、その土地柄から雪対策・断熱性能など寒冷地仕様の住宅が高く評価される傾向があります。また、札幌市内や主要都市では地下鉄・JRアクセスの良いエリア、商業施設・学校が近くにある地域はリセールバリューが安定しやすい傾向にあります。
リセールバリューの高い家は、売却時に住宅ローンの残債をカバーしやすく、次の住まいへの資金に充てることも可能です。予測のつかないライフプランの変化に備えるうえで、リセールバリューは強力なリスクヘッジとなり得ます。
資産価値が落ちにくい物件の3条件
では、具体的にどのような物件が「リセールバリューの高い家」といえるのでしょうか。将来の資産価値を守るために押さえておきたい3つの条件を紹介します。
条件1:【立地】「駅徒歩10分以内」は変わらぬ価値基準
不動産の価値は「立地が9割」といわれるほど、立地条件は極めて重要です。交通利便性や生活利便施設(商業施設、学校、病院など)へのアクセス、そして将来的な都市開発計画などが、長期的な需要と供給、ひいては資産価値を大きく左右します。例えば「最寄り駅から徒歩10分以内」などの条件は、時代が変わっても根強く支持されている価値基準です。
駅近の物件は通勤や通学の利便性が高く、常に一定の需要が見込めます。これは、将来「売りたい」「貸したい」と思ったときに、買い手や借り手が見つかりやすいということを意味します。たとえ購入時の価格がやや高くても、将来的な資産価値を考えれば、それだけの投資価値があるといえるでしょう。
条件2:【管理状態】マンションは管理体制、戸建ては修繕履歴がカギ
建物の状態は、資産価値を大きく左右します。いくら立地が良くても、管理やメンテナンスが行き届いていない物件は、資産価値を大きく損なうリスクが高まります。
| チェックすべきポイント | |
| マンション | ・長期修繕計画が明確に立てられているか ・修繕積立金が適切に集められているか(滞納が多くないか) ・エントランスや廊下など、共用部が清潔に保たれているか |
| 戸建て | ・過去にどのような修繕(外壁塗装、屋根防水など)を行ったか ・定期的な点検やメンテナンスの履歴が残っているか |
マンションも戸建ても、可能であれば購入前に「住宅診断(ホームインスペクション)」を依頼し、専門家の目で建物の状態を確認してもらいましょう。目に見えない劣化や不具合のリスクを事前に把握することができます。
条件3:【普遍性】多くの人に選ばれる間取り・デザイン
「自分たちらしさを反映した個性的な家」には魅力がありますが、資産価値の観点では慎重になるべきです。例えば、極端に広い吹き抜けや、特定の趣味に特化した内装など、あまりに奇抜な間取りやデザインは、将来の買い手を選ぶ可能性があり、市場での売却期間が長期化したり、価格交渉で不利になったりする可能性があります。
例えば、広いリビングの2LDKよりも、ファミリー層に人気のある標準的な3LDKのほうが、需要は安定しています。デザインにおいても、特定の流行色や過度な装飾を避け、白やベージュを基調とした内装、シンプルな建具や設備など、誰にでも受け入れられやすい普遍的なスタイルが長期的な資産価値維持に繋がります。
重要なのは、「誰もが住みたいと思えるか」という視点を持つことです。普遍的な魅力こそが、資産価値を保つカギになります。
資産価値を最大化する「住宅ローン」の戦略的活用法
リセールバリューの高い家を見つけたら、次に考えたいのは住宅ローンの活用法です。ローンを「単なる借金」として捉えるのではなく、資産形成のツールとして戦略的に活用する視点が大切です。
①「頭金ゼロ」で手元資金を残し、資産価値向上リフォームに備える
「頭金を多めに入れて借入額を減らすべき」と考える人も多いですが、資産価値の観点では、あえて頭金をゼロまたは少額に抑え、手元に資金を残すという選択も有効です。
残した手元の資金は、病気などによる予期せぬ出費に備える「生活防衛資金」として機能するだけでなく、購入後に物件の資産価値を高めるリフォームやリノベーション費用にも充てられます。例えば、築年数の経った中古物件を頭金ゼロで購入し、その分の資金で水回りや内装を最新設備に刷新することで、周辺相場以上の売却価値を生み出すということも可能です。
ただし、頭金ゼロは月々の返済負担が増加する、金利がやや高くなる可能性がある、住宅ローン審査が厳しくなるなどのデメリットも存在します。手元資金の活用計画と合わせて、ご自身のライフプランやリスク許容度に応じて慎重に検討することが重要です。
②「返済期間」を長く設定し、毎月のキャッシュフローを最大化する
月々の返済額を抑えるため、返済期間は可能な限り最長(例:35年)で設定します。これは、将来の売却時に有利な状況を作り出すための布石です。
・売却までの「守り」を固める
月々の返済額が低いと、急な収入減や支出増があっても家計が破綻しにくくなります。これにより、「ローンが払えないから、不利な条件でも売却せざるを得ない」という最悪の事態を避けられます。安定した返済実績は、将来の買い手に対する信頼にも繋がります。
・「繰り上げ返済」というカードを手元に残す
毎月の余剰資金は、無理に繰り上げ返済に回さず、まずは手元に貯めておきます。そして、売却が決まったタイミングで、残債を一括または一部返済することで、売却益を最大化します。返済期間が長いほど、この「繰り上げ返済」というカードを柔軟に使える期間も長くなります。
毎月の返済額を最小限に抑え、手元の現金を最大化しておくことが、将来の売却時における交渉力を高めます。
③「団信」活用で生命保険をスリム化し、余剰資金を資産価値向上へ
住宅ローンに付帯する団体信用生命保険は、ローン契約者に万一のことがあった際に残債がゼロになる強力な保険です。
・保障内容を見直し、重複をなくす
これまで加入していた高額な生命保険の保障額を、団信でカバーされる分だけ減額できないか検討しましょう。これにより、毎月の保険料という固定費を削減できます。
・削減分を「未来の価値」に投資する
削減できた保険料は、将来のリフォーム資金として積み立てたり、資産運用に回して手元資金を増やしたりと、物件の資産価値を間接的に高めるための原資として活用できます。
住宅ローンを組むことで生まれる「保障」という価値を最大限に利用し、家計のスリム化と将来の売却益向上に繋げる視点が重要です。
未来の自分を助ける「資産としての家」を手に入れよう
これからの時代、マイホームは「一生住む終の棲家」である必要はありません。むしろ、ライフステージの変化にも柔軟に対応できる「資産としての家」を持つことが、将来の自分と家族を守る大きな力になります。
「住み心地」はもちろん大切ですが、それに加えて「リセールバリュー」という視点を持つだけで、家は単なる消費財ではなく、家族の未来を支える強力な資産へと変わっていきます。
この記事が、あなたの家選びや住宅ローンを考える際のヒントになれば幸いです。自分に合った選択肢を見つけ、納得のいく住まいづくりを進めていきましょう。
